カマキリ (Short Story)
- Shannon N. Smith
- 2018年6月8日
- 読了時間: 1分

そのカマキリが何の前触れもなく言葉を発したのは、サトルが15分前に家を出て、もう少しで駅に着くというところで、部屋のカギをかけ忘れたのを思い出したのと同タイミングだった。
「お腹が空いたのです」
「はい?」サトルは声がしたほうに顔を向ける。が、誰もいない。
「お腹が空いて仕方がないのですよ」
サトルは混乱の色を浮かべて、あたりを見渡す。
「ねえ、お兄さん、食べ物分けていただけませんかねぇ?」
ピンポイントで声のする方を見やると、見事なカマを携えた、オスのカマキリがサトルに視線を送っていた。サトルは息をのむ。恐る恐る声を発してみる。「あの、僕に今話しかけました?」
「はい。あっ、申し遅れました。私の名前はカマです」
「はあ」サトルは返事をしながら周囲を確認した。誰かがイタズラ動画でも撮影しているのではないか、と。が、特にそういったことをしている人は見当たらない。
「あなたの名前は?」カマはカマを前に差し出してきた。
握手を求めているのだろうか、とサトルは思い、そのカマをつかもうと手を差し出したその瞬間、カマはサトルの指を一かじりし、猛スピードで飛び去った。
終わり。
―――――――
これはフィクションです。Shannonが、頭に浮かんだストーリーをだらだら書いているだけです。
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