カルト幹部体験記 第30話 H隊長直下で活動
- Shannon N. Smith
- 2018年1月25日
- 読了時間: 3分

(第1話はこちら)
Kが支隊長を降格になると同時に、わたしはH隊長直下で活動することになった。
H隊長との出会いは思い出せば懐かしいほど昔に感じる、1999年末。わたしがはじめて日曜勤行に参加した日のことだった。
とにかく明るくて力強い。頼れる隊長、という印象を常に持っていた。
しかし、そういった明るさの陰で、支隊長などの幹部に対しては、泣く子も黙るほどの厳しさと、時には理不尽と思えるような成果を強要してくる、という側面も有していた。
Kは降格になる少し前、よくH隊長の愚痴をこぼしていた。隊長はいつも数字ばかりで、全然中身を見てくれない、と。
近いうちに支隊長になると期待されていたわたしに対して、H隊長は支隊長に接するのとほぼ変わらない接し方をしてきた。
当時のわたしは、仏滅年代などの件に起因する疑念を抱いていたこともあり、若干停滞気味だった。
そこにH隊長から強烈なムチを何度も入れられた。
ある法戦月、わたしは入信者を一名も出せないまま、最終日を迎えた。
その日は横浜在住の班員とともに折伏(勧誘)をしたのち、わたしも、わたしの友人をそのまま横浜で折伏した。が、どちらも入信にはいたらなかった。
二件目の折伏が終わったのは、夜の22時過ぎだった。
H隊長に連絡を入れる。
「シャノン。どうだった?」
「いや、すみません、また逆縁(入信に至らなかった)でした」
「今月ずーっと逆縁続きだよね。今日、何の日か知っている?」
「はい。最終日です」
「うん、最終日でゼロなんてありえないよね。話にならないよ」
「はい。すみません」
「うん。すみませんじゃなくて、どうするんだ?」
「いや、これから地元に戻ってできることやろうと思っています」
「できることやるんじゃなくて、誓願(ノルマ)は必ず達成だろう。先生に申し訳ないと思わないのか?」
ここでH隊長は、誓願を達成しない者は先生の命がけの戦いをなめている、不忠の弟子であるとわたしを延々と責めた。
最後に「達成するまで電話するな」と言うと、電話を切った。
わたしは帰りの車、片っ端から友人・知人にこれから会えないかと電話を入れていく。ほとんど友人を折伏しつくしていたこの段階で、わたしの電話をとる人間はだいぶ少なくなっていたが、非通知なども駆使して、なんとか連絡をつけようと試みる。
電話に出たとしても、ほとんどが話すらできない。
暴言を吐いて電話を切る者。わたしだと分かった瞬間に電話を切る者。すぐに話をはぐらかして、なんだかんだ電話を切る者。
それはそうだ。わたしは顕正会の活動にすべてをかけてここまでやってきたのだ。顕正会の折伏では、中途半端は許されない。本気で相手を救おうと思えばこそ、いかなる手を使っても入信させようとあらゆる手を尽くす。
しかし、それは、求めていない人間にとっては、ただの究極的にしつこい宗教勧誘をしてくる基地外にしか見えない。
こちらが罰論を言うのも、気づいてほしいからだ。悪意を持っているわけではない。
ただ、悲しいかな、これは宗教に限った話ではないのだが、求めていない人間に向けられる情熱的善意は迷惑でしかない。
わたしはそれでもあきらめずに、電話を次から次へとかけ続けた。
ようやく一人、電話を切らない人間が現れた。
スケボー時代、お世話になった、I先輩。
直接顕正会がらみの話をするのは今回が初めてだったが、わたしが顕正会で活動している噂は聞きつけていた。半ばけんか腰の空気ではあったが、なんだかんだ、彼の地元である小金井方面で会えることになった。
わたしは夜の環八を、小金井へと向けて車で走る。
(第31話へと続く)
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当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。
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