カルト幹部体験記 第45話 脱会を決意
- Shannon N. Smith
- 2018年5月11日
- 読了時間: 2分

(第1話はこちら)
臨終の相について話したあと、何について話したか覚えていないが、最後、こう言った。
「Y部長、Hさん。顕正会をやめます。日蓮正宗に帰伏(入信)させてください」。わたしは深々と頭を下げた。
Y部長とH氏は、まるで全国大会で優勝した甲子園球児のように喜びの声をあげた。
「いやあ、シャノンさん!!!! その言葉を待っていました!!!!」Y部長は口が両耳に届きそうな勢いの笑みだ。
「絶対に大丈夫ですから!」H氏は言う。
帰伏すると言ったものの、わたしの内面を支配していたのは、喜びとは程遠い感情だった。
世界平和に貢献する善行為を命がけでしていたつもりが、実際はテロ行為に加担していたと知るような気分だろうか。しかも仲間をたくさん巻き込んで。
あるいは、自分の家族を殺した人間をようやく突き止めたら、それもまた最愛の家族であったと知るようなものか。
この気持ちを共有できる人間が果たしているのだろうか。
いや、いる。H氏もそうだし、下野氏もそうだ。
確かにいる。激しくやっちまった連中がこの世の中には少数ながらいる。
「では一週間後に御受戒(日蓮正宗に入信するための儀式)をしますので、また西荻窪駅で待ち合わせしましょう」。駅まで送ってくれたH氏がそう言って別れを告げるまでの間、わたしの頭の中は、整理のつかない状態になっていた。
家に着くと、部屋の電気を点けた。
ベッドに横たわる。
ため息をついた。
身体が熱い。痛い。涙が出た。
(第46話へと続く)
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当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。
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