カルト幹部体験記 第41話 繋がりつつある点と点
- Shannon N. Smith
- 2018年4月12日
- 読了時間: 3分

(第1話はこちら)
わたしは元顕正会班長にして現日蓮正宗信徒を名乗るH氏とともに、顕正会東京会館とは駅の反対側にある、人気のない公園へ向かって、歩みを進めている。
表向きには平静を装っているが、内心には、罪悪感にも似た感情と、安堵の感が、複雑に絡み合いながら、渦を巻いていた。
『富士大石寺へ帰ろう』のホームページを運営しているのは日蓮正宗信徒である。もちろん『下野正信』も日蓮正宗信徒である。
真実を確かめたい。先生は本当に御本尊を偽造しているのだろうか。もし顕正会が間違っていたとしたら、日蓮大聖人の仏法そのものが間違っていたということになるのか。それとも、まさか、日蓮正宗が正しいのか。
「日蓮正宗って言っても、確かいろいろなお寺があって、いろんな法華講があると聞いていますが、どこの寺院の所属なのですか?」公園に向かいながら、わたしはH氏に聞く。
「理境坊所属、妙観講です」。H氏は言う。
「えっ、ほんとですか!?」わたしは思わず、声が大きくなる。
「はい」
妙観講とは、まさに『富士大石寺へ帰ろう』のホームページを運営している人たちが所属している組織である。『下野正信』氏もそこに所属しているはずだ。
顕正会内部では妙観講という名を口にすることすら汚らわしいと言わんばかりに、忌み嫌っている。妙観講が来たら、追い返せ、相手にするな、と、話しをすることすら、不文律だが禁じられている。が、禁じられていればこそ、逆にわたしは気になっていた。
公園についた。
わたしは、表向きは顕正会支隊長として、彼らの言い分を破折する前提で議論に臨む。
最初に、御遺命について。ここに関しては、顕正会に分があるように思えた。どうもH氏の言っていることは、言い訳にしか聞こえなかった。
わたしは御金言(日蓮大聖人の言葉)を引用しながら、日蓮正宗の言い分を破折していった。一方、H氏はH氏で、こちらの言い分に関してはすべて何らかの答えを用意していて、納得できるかどうかは別として、真正面から一つ一つ反論してきた。
それまでに何度か創価学会の広宣部幹部と法論(だれが仏の意に沿って正しいか議論すること)してきた経験のあったわたしは、かなり法論慣れしていたにもかかわらず、H氏も一歩も引かない。
2時間くらい経ったころ、H氏が話の方向を変えることを提案してきた。確かにそのほうが建設的になるだろうと思い、同意した。
そこで、H氏はついに顕正会で偽本尊を作成している疑惑について、触れた。
浅井先生が指導するたびに、顕正会が護持しているという御本尊の数が増えている事実。さらには止めを刺すように、次のとおり、言った。
「顕正会で護持しているという、日布上人の大幅御形木御本尊ですが、大幅の御形木御本尊なんてそもそも日蓮正宗に存在しません」
まるで突然命綱が切れて宇宙に一人放り出された宇宙飛行士のように、わたしの心は、何かにつかまろうともがいていた。
「考えてもみてください。御形木御本尊はそもそも、各家庭に安置するためのものです。家庭に大幅なんてありえません」
「実は、その点に関しては、わたしも腑に落ちないのです」。わたしはついに、口に出した。今まで心の中で顕正会に対して疑いを持ったことはあっても、口に出すことは一度もなかった。
ももの上で、何かが小刻みに、揺れている。見下ろすと、わたしの意思を無視して、震える両手が目に入った。
(第42話へと続く)
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当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。
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