カルト幹部体験記 第32話 仏滅年代の疑問をぶつける
- 2018年2月9日
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(第1話はこちら)
H隊長直下から、わたしはKT支隊に移動することになった。確か、2001年の中頃であったと記憶している。
KTさんは、とにかく物腰が柔らかく、物知りで、やさしさで支隊員を引っ張っていく、古参幹部だった。
折伏(勧誘)の場に同席してもらった際には、相手が映画好きと見るや、映画の話で45分ほど盛り上がったかと思うと、あっという間に相手を入信までこぎつけたりした。今までわたしがやってきた折伏とは、まったく違ったそのスタイルに、新鮮味を覚えた。
仏滅年代と大乗非仏説論について知ってからというもの、若干停滞していたわたしの組織は、活気を取り戻し、入信者もまた徐々に出るようになっていった。
同い年で友人であったKと違い、大分年上だったKT支隊長に対して、わたしは徐々に弱みを見せるようになっていった。
ある日、わたしは意を決し、元々胸にしまっておこうと決めていた仏滅年代について聞いてみようと、KT支隊長を呼び出した。
呼び出した先は、ときわ台駅と顕正会東京会館(旧本部会館。2000年11月に本部会館はさいたま市大宮区に移転した)の間にあるファミマの裏だ。
「おお、シャノン君。どうしたんですか、相談って?」KT支隊長は笑顔で手を振りながら近づいてきた。
ファミマ裏の屋根付き駐輪場の地べたに、二人で座った。
「いやぁ、KT支隊長、お時間を作ってくださりありがとうございます。実は……」わたしは質問するのを躊躇した。何か、聞いてはいけないことを聞いているような気分に襲われたのだ。
「どうしたの?」KT支隊長は親身になって耳を傾ける。
「あの、釈尊(ブッダ)の入滅(亡くなる)についてなのですが、顕正会では3000年くらい前と言っていますが、前に学校の授業で聞いたのをきっかけにいろいろ調べていくと、どうも現代の学説では釈尊の入滅を2500年前くらいであるとしていまして……こんな話って聞いたことあります?」
KT支隊長の顔は真剣だ。「いや、ない。そんなことを今の学者連中は言っているの?」
知らないの? 本当かよ? とわたしは内心思ったが、さすがに口には出さなかった。
「いや、まあ、調べていくと現在の定説としては、そうらしんですが、これってどうやって破折すればいいのか、って気になりまして……」
どういったことを根拠に現代の学者が釈尊を2500年ほど前の人物であると言っているかという根拠と、それと対比する形で、日蓮大聖人が用いられている説の根拠である周書異記についてわたしは説明してみた。
一通り話を聞き終えたKT支隊長は言った。「よし、隊長を通して男子部長(※)に聞いてみよう」
(※浅井先生の長男である浅井克衛男子部長は、確かこの頃には『青年部長』か『主任理事』になっていたと記憶している。ここでいう男子部長とは、その跡を継いだ、浅井城衛氏のことである)
「おお、ありがとうございます。いやあ、顕正会が正しいのは成仏の相があるからわかるのですが、これが破折できないのが悔しくて。とてもうれしいです」。わたしは素直な喜びの声を漏らした。顕正会が正しいと、成仏の相があるから『思いたい』という域まで確信が揺らいでいるという本音は、心の奥底に、このときは沈んでいた。
後日、約束通りH隊長から、男子部長に聞いてみた、との連絡があった。
その答えは、納得からは程遠かった。
(第33話へと続く)
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当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。
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