カルト幹部体験記 第20話 登用試験
- Shannon N. Smith
- 2017年11月16日
- 読了時間: 3分

(第1話はこちら)
子どものころから、わたしは興味のあること以外、勉強するのが大嫌いだった。
小学生のころはよくF(日本の通信簿で言うところの1)を取って、親にこっぴどく叱られた記憶がある。
これは今でもそうだ。人に言われたからやる、というのは苦痛でしかない。
つい数年前もある人に、ある資格を取るよう勧められ、試しに教科書を買って勉強しようとしたが、開いて5分もしない内に閉じた。勧めてくれた人には申し訳ないが。
興味の沸かないものは沸かない。
けれど、自ら興味を持ったものなら寝食を忘れ没頭できる。
だからわたしは、顕正会で活動を始めて以来、日蓮大聖人の仏法の教義体系について学べる「折伏理論解説書」を穴が開くまで読んだ。
1,2年で、334ページあったその本を初めとして、顕正会の書籍や浅井先生の様々な指導を、ほぼ丸暗記するまでに至った。が、不思議なことに、いまはほとんど忘れている。
1999年1月某日。わたしはKと、わたしの班員数名と、池袋にある某専門学校ビルの前にいる。登用試験の会場だ。
「シャノンなら大丈夫っしょ!」Kは言う。
「まあ、どうなんだろうね」。私は謙遜を装ったが、内心は自信満々で必ず1番になってやると意気込んでいた。
登用試験とは、年に一回、1月に行われる、顕正会の教義についての理解度を確かめる試験である。
全国各地で一斉に行われ、後日結果が新聞で発表される。
新聞だけ見ると、隊ごとにただ名前が並んでいるだけのように見える。が、実は並んでいる順番が順位を示しているということは、周知の事実であった。
そのため、顕正会の活動家は、それぞれの組織で1番を目指し、必死に勉強する。競争心でもって、教学を深めるのだ。
わたしの心理状態はどうだったかというと、たしかに1番になるという意気込みも強かった。しかし、登用試験が無かったら勉強しなかったかというと、そうではない。あろうがなかろうが、仏法や顕正会の教義に興味があったので、試験の存在を知る前から貪るように学んでいた。
「あっ、そろそろ入ったほうが良さそうだから、入るね」。わたしはKにそう言い、班員たちとともにビルに入る。
テストが行われる予定の部屋は、こじんまりとしていた。所狭しと机が並べられている。
ホワイトボードが角に置かれていて、そこには登用試験を行なう教室であることを示す紙が、マグネットで掛けられていた。
着席し、開始を待っていると、部屋はどんどん人で埋まっていく。
ほどなく男性が部屋に入ってきて、開始を告げる。
選択問題と、回答を書く問題が、混在していた。わたしは一気に問題を解く。
あっという間に最後の問題までたどり着き、答えを書いたころに時計を見ると、だいぶ時間が余っていた。少し見直して、満足気に椅子にもたれかける。
しばらくして、終了時間が来たことを、係りの人が告げた。
わたしは、班員とともに会場の外に出て、Kと合流する。
「どうだった?」Kが聞く。 「余裕だった」とわたしは答えた。 「おお、ってことは一番かな?」 「だと思うよ」。わたしは得意気だ。
後日、登用試験の結果が新聞で発表された。わたしの記憶では、2番か3番だった。おそらく点数としては上位何人かがタイであったと思われるが、そこまでは新聞では分からなかった。
登用試験以降も、わたしは仏法の教えを学び続けた。学べば学ぶほど、日蓮大聖人の仏法こそが本物の教えであると、教学的な側面からも、確信を深めていった。
この確信は、のちに大学の授業で仏教史について学ぶ日が来るまで、一切揺らぐことはなかった。
(第21話へと続く)
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当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。
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