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カルト幹部体験記 第18話 初めての総幹部会本番、班長職拝命

  • 執筆者の写真: Shannon N. Smith
    Shannon N. Smith
  • 2017年11月2日
  • 読了時間: 4分

(第1話はこちら

 数日後、初めて総幹部会本番に参加する日にして、班長職を拝命する日がやってきた。

 日中はいつものバイト先で働いたが、頭の中は夜のことでいっぱいだった。

 班長……か。格好いいな、と心の中で思っては、ニヤける。あまり仕事に集中できない。

 バイトが終わると、わたしはKと一緒に埼玉県川口市へ原付で向かった。道中も頭の中はずっと妄想でいっぱいだった。

 総幹部会本番の会場は、川口総合文化センター。メインホールの収容人数は約2000人。ホールに入りきれない人たちは、同センター内のいくつかの場所に設置されているテレビで、内容をリアルタイムで見ることができる。毎月3000人ほど本番会場に来ているとのことだった。

 時間的に本番開始までかなり余裕を持って出発したので、メインホールには間違いなく入れるとKは言う。しかし、いかんせん初めてであるわたしは、本当に入れるのか少し不安だった。

 最前線で活躍する幹部たちが集結する総幹部会。なんとしても、できるだけ生の空気に触れたい。

 1時間ほどで、目的地についた。

 会場の入口にはすでにたくさんの人がいる。ほとんどが女性だ。時刻は18時を回ったあたりであることを思うと、男性の多くは今ごろ仕事を終えて向かっているところなのだろう。

 エントランスの自動ドアをとおり、エスカレーターを二階へ上ると、メインホール入り口が見えた。その前にはオープンスペースがあり、人混みの中にKの兄であるH支隊長がいる。

挨拶をする。H支隊長は、これから行われる総幹部会に参加できることがいかにありがたいことかを語った。

 そのまま二人といろんなことを話していると、あっという間に、そろそろ中に入ったほうがいい時間になってきた、とKが言った。

 会場に入り、 二階席に座る。

 今か今かと、始まるのを待つ。

 壇上にはたくさんの椅子が並べられていて、特に大幹部と思わしき人たちで埋め尽くされている。浅井男子部長の姿も見えた。

 ほどなく、司会が立ち上がり、先生をお迎えすると言った。全員が頭を下げて拍手するなか、浅井先生は舞台袖から姿を現し、着席する。

 続いて、先生が作詞された『広宣流布の大行進』を合唱し、総幹部会は厳かに開会された。

 体験発表。

 活動報告。

 代表決意。

 浅井先生の指導。

 最後にまた全員で大合唱した曲名は、『両眼滝のその日まで』。

 瞬く間に総幹部会は終わった。

 終了後、会場の側で隊の集まりがあるとのことで、わたしはKとともに向かう。そこで「班長辞令」をいただくことになっている。

 隊の集まりは、50名ほどの男子部班長以上の幹部が、隊長を取り囲む形で、会場から川口駅へと通じる高架で行われた。

 H隊長はいつも以上に、気迫に満ちている。

 隊として68万会員達成に貢献できたことと、総幹部会で先生からいただいた指導の感激を熱く語り、最後は12月の意義について説明した。

 締めくくりとして、わたしが新しい班長として抜擢されたことを満面の笑みで告げると、前に来て一言、言うよう促してきた。

 わたしは見よう見まねで、先生に大折伏(勧誘)でもってお応えしていく決意を述べる。

 Kは満足げな表情を被っている。

 わたしが話し終わると、全員が拍手した。一時的だが、なんだかヒーローになったような気分だ。

 拍手が止むと、隊長はわたしに班長辞令を手渡してきた。さらに拍手が沸き起こる。

 辞令に目を落とす。「辞令 シャノン・スミス 男子部第一●隊 班長に任ずる 平成十一年十一月二十九日 冨士大石寺顕正会 会長 浅井昭衛」と書かれている。

 この日、わたしは顕正会幹部としての第一歩を踏み出した。

第19話へと続く)

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当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。

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© 2017 by Shannon N. Smith.

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