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カルト幹部体験記 第15話 初めての総幹部会ビデオ放映

  • 執筆者の写真: Shannon N. Smith
    Shannon N. Smith
  • 2017年10月13日
  • 読了時間: 4分

(第1話はこちら

 総幹部会ビデオ放映をやる予定のビルは、航空公園駅から10分くらい歩いたところにあった。

 自動ドアを通って一階ロビーに入ると、掲示板が見えた。その日に行うイベントの予定が張り出されている。

 あった。ビデオ放映が行われる予定の階を見つけて、エレベーターに乗って上がった。

 会場に着くと、Kが入口付近にいた。挨拶をして、受付へ向かう。

 用紙を渡され、そこに自分の名前と、所属を書いた。

 中に入ると、左手中央に大きなスクリーンがある。その手前には、10メートルくらいの空きスペースを挟んで椅子が百脚くらい並べられていた。なぜか椅子に座っている人はあまりいなく、ほとんどがスクリーンと椅子の間の地べたに座っている。ご丁寧に靴を脱いでいて、胡座をかいていたり、正座していたりした。老若男女、いろいろな人が目に入った。

 Kはわたしを椅子の方ではなく、スクリーンになるだけ近い位置へと案内してくれた。私たちはそのまま地べたに座る。

 しばらくすると、証明が落とされ、ビデオ放映が始まった。

 最初に体験発表。登壇者が話し始めるとすぐに、耳が不自由な人であると話し方からわかった。驚いたのは、本人は少し前まで全く耳が聞こえなかったそうだ。それが仏法に出会い、勤行と折伏(勧誘)を実践していく中に、耳が聞こえるようになったとのことだった。後半、「仏法は凄いんだ!」と言ったときの迫力に、わたしは圧倒された。

 体験発表が終わると、スクリーン内の人たちが拍手するのと同時に、会場内の人たちも全員拍手する。わたしも倣う。

 その後、ビデオが進めば進むほど、登壇者は迫力に満ちた人ばかりになっていった。

 1時間を過ぎた辺りで、少し眠気に襲われた。証明が暗いのと、日頃の疲れが溜まっていたせいだろう。また内容も、正直、当時のわたしには少しかたっ苦しく感じられるものが続いたのもあるのかもしれない。

 気づいたら、最初の体験発表以降で今でも印象に残っているのは、登壇者の全員が同じようなセリフで締めくくっていたということくらいだ。「先生にお応えしてまいる決意であります」等々と。

 地べたに座っていた全員が正座し、頭を下げながら拍手する。

 会長、浅井先生の指導だ。

 顕正会がいかに崇高で清らかで、国を救う唯一の団体であるかを力強く語る。確信と迫力に満ち溢れる容姿で、ズシズシと心の奥深くに響いてくるような声が、今でも脳裏に焼き付いている。

 先生の指導が終わると、歌をうたってからビデオ放映は終わった。(と、記憶しているが、歌を本当にうたったか記憶が定かではない)。

 わたしはKとともに、会場となったビルの外に出て、いっぷくした。

 Kは言った。「どうだった?」

「最初の体験発表がとにかくすごかった。耳が聞こえなかったのが聞こえるようになるなんて、俺、目の前でそういった話しを聞くの初めてだよ」

「うんうん。あの話は確かにありえないくらいすごいよね。んで、もっとすごいのが、ああいった話は決して仏法の世界では珍しくないってことなんだ。シャノンもフラッシュバック治ったわけだし。近々シャノンも体験発表かな」。Kが含み笑いを帯びた視線を送ってきた。

「うっ、マジ」。わたしは苦笑いする。

「まあまあ、内容が内容だし、まだ時効きてないでしょ? 総幹部会でやるかどうかは別として、隊座とかなら有りだと思うよ」

「お、おう」。わたしは緊張を隠せない。隊座とか、とKは軽く言ったが、そこには浅井男子部長がいらっしゃるのだ。ビビって声が出なかったらどうしょう、と今のうちから不安になってきた。

 その日は早々に切り上げて、わたしは家路についた。

 翌日(あるいは数日後)、わたしは目を覚ますと、日曜勤行へ出発する支度をした。

 ついに組長辞令をいただく日がやってきた。

第16話へと続く)

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当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。

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© 2017 by Shannon N. Smith.

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