カルト幹部体験記 第13話 初めての入信者、そして隊座
- Shannon N. Smith
- 2017年9月29日
- 読了時間: 5分

(第1話はこちら)
初めての日曜勤行を終え、そのまま家路につこうとしたらKが言った。「あっ、んでさ、きょう一緒に折伏(勧誘)しない?」
「おお、いいね。やろう。誰がいっかな。とりあえず何人か電話してみるね」
「いいねぇ」
わたしは何人かの友だちに電話する。一緒にスケボーをやっていたMと連絡がついたので、その日の夕方に会う約束をした。
一度家に帰って少しのんびりしてから、またKと合流して、夕方Mと会った。MはすでにKから仏法の話しを聞いていたのだが、わたしもやりだしたことを告げると、驚いていた。
自分の体験を話し、「ってことでとりあえず一回ためしてみない?」と言うと、Mは以外にもあっさりと「おお、いいよ」と快諾した。
わたしはKと目を見合わせると、Kは意味ありげな含み笑いをわたしに投げかけてきた。俺が話した時はダメだったのになんでお前が話したらOKなんだよ、無言の笑みが冗談めいてそう語りかけてきているように感じた。
Kが導師をつとめてMの入信勤行を執り行い、終えると、Mと別れた。
Mの姿が見えなくなるとKが言った。「やったじゃん! シャノン! 初の入信者じゃん!」わたしよりもKの方が喜んでいるようだ。
「おお、意外とあっさりだった」
「ね。今後もMとは連絡を取り合って、勤行を続けられるようしっかりと指導していこう」
その日は、夜もふけていたのでそのままKと別れた。
数日後、前に誘いを受けていた隊座談会の日がやってきた。顕正会内では通称「隊座」と呼ばれているものだ。
約束通りときわ台駅の改札で待っていると、Kが姿をあらわした。「よし、いこっか」
芙蓉会館はときわ台駅から徒歩一分ほどのところにあった。外観は本部会館と比べると明らかに小さく、注意をしていないと見過ごしてしまうくらい、普通のビルっぽく見える。
中に入り階段を上っていく。下駄箱があった。
「ここで靴を脱いで中に入るよ。仏間だから入るときの一礼を忘れないでね」とKが声をかけてきた。
靴を脱いで中に入り、一礼し、仏壇から一番近い最前列まで歩いて正座した。御本尊様に御挨拶をする。しばらく座って待っていると、次々と人がなだれ込んできた。気づいたら、部屋がパンパンになっていた。100名以上はいるように感じる。
部屋の作りは、一言で言うと、大きな仏間。本部会館と比べるとかなり小さく感じるが、巨大な仏壇を中央に据えた長方形の部屋だった。
さらに待っていると、後ろの方から「こんばんは」とみんなの挨拶する声が聞こえきた。振り返ると、浅井克衛男子部長が仏壇のほうに向かって歩みをすすめていた。浅井先生の長男である。後ろにはH隊長が続く。
その堂々たる確信に満ち溢れる二人の姿を見て、思わず内心で、かっけぇ、と言っていた。
浅井男子部長は仏壇の前に正座して、軽く咳払いをし、「なんみょー・・・」と唱え始めた。部屋の全員が「ほー」と唱和する。
すると次の瞬間、違和感を覚えた。みんなは「なんみょーほーれんげーきょー」と唱えているのに対して、浅井男子部長は「なんみょーほー『い』れんげーきょー」と唱えていた。が、その違和感は一瞬にして、かっけぇ、に変わっていた。
司会が隊座の始まりを告げると、体験発表がはじまる。細かい内容は覚えていないが、すごかった。続いて活動報告、そして何人か登壇した後、H隊長が登壇した。
おっ、隊長だ。どんな話するんだろう、と思っていると、この前の日曜勤行で会ったときの隊長とは打って変わって、ものすごい気迫で話し始めた。そのあまりの気迫に最初は冗談かと思って笑いそうになったが、話が進めば進むほど、心の奥にズシズシと並々ならぬ、先生にお応えするんだ、との決意が伝わってきて、わたしは思考停止状態になった。
最後に浅井男子部長が登壇した。
細かい内容は覚えていないが、いくつか印象に残っている。
はじめにある地方会合であった、耳が聞こえなかった人がこの仏法を実践することによって聞こえるようになったとの体験発表に触れた。純粋にすごいと思った。
そして後半、日曜日に来ていた右翼について触れた。
右翼はやはり創価学会が送り込んでいるらしい(※あくまで顕正会の見解)。それについて浅井先生は、あんなのは風の前の塵だから放っておけ、と言っていたそうだ。しかし浅井男子部長は、それでは男子部として先生に申し訳ない。ちょっと懲らしめた方がいいから、男子部の集まれる人は次の日曜勤行の時に常盤台公園に集まるように、と言った。
最後は歌をうたって、終わった。時間にして2時間くらいだったか。
その後、隊長を中心にして輪になる。続いて、Kの兄であるH支隊長を中心として輪になった後、Kと一緒に家路についた。
長い一日だった。
隊座で感じたのは、やはり顕正会は本気であるということだった。
次の日曜日、わたしは風邪をひき、日曜勤行への参加がかなわなかったので、後日Kに、右翼との件はどうなったか聞いた。
「いや、もうマジでやばかった。3000人の男子部が常盤台公園に集まってさあ」とKは興奮気味に語り始めた。
(第14話へと続く)
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当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。
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