top of page

カルト幹部体験記 第10話 初めての折伏(勧誘)

  • 執筆者の写真: Shannon N. Smith
    Shannon N. Smith
  • 2017年9月8日
  • 読了時間: 4分

(第1話はこちら

 1999年9月某日。わたしは実家の近くにあるガスト(ファミレス)に、自分にとってスケボーの師匠であり、親友であるNと、顕正会のKと一緒にいる。

 わたしはいつもどおり、目玉焼きハンバーグとライスを頼み、NもKも同じものを頼んだ。もちろんドリンクバー付きで。

 ドリンクバーに行き、それぞれが自分のグラスに飲み物を注ぐと、全員が同じ「コーラ」を手にしていた。これもスケーターの性なのだろうか。

――30分ほど前

 わたしがNを電話で「話がある」と呼び出すと、Nはすぐにわたしの家に車で迎えにきてくれた。

 わたしは単刀直入に言った。「実は話したいことが二つあるんだ。一つは、おれ大学やめるから。今のモデルの仕事でのし上がって役者になるわ。もう一つは、おれKの誘いで仏法始めたんだ。んで、これがとにかく凄いから、その話。とりあえずすぐそこのガスト行かない?」

 Nとはもう長い仲で、Kも共通の友人だ。いろいろなことを一緒に経験した。最近はお互い忙しいため会う機会は減ったが、今でも親友と呼ぶにふさわしい存在だ。

「おお、そうなんだ。いいよ」。Nは快諾し、わたしとKはNの車に乗り込む。1分ほどでガストに着いた。

 わたしたち3人はコーラを飲みながら、目玉焼きハンバーグとライスをほお張る。

「うめえー」。Nが言った。

「ああ、やべえよな。やっぱガストはこれっしょ」。Kが言う。

「うん、しかもこれでこの値段だからな。貧乏な俺らにはちょうどいいわな」。わたしがそう言うと、みんなで笑った。

 食べるのが速いわたしたちは、あっという間に平らげ、飲み物のおかわりをし、食後のいっぷくをする。

「んでさ、仏法の件なんだけど」とわたしは切り出した。

「おお」。Nは言った。

 ここからわたしは、Nがキリスト教徒であると知っていたため、仏法がいかにキリスト教に比べて凄いかということを自分なりにああだこうだと喋った。

 Nをどういう人か一言で説明してくれと言われた場合、多くの人は「優しい人」と表現するだろう。彼は、わたしの話を親身になって聞いてくれた。

 そして自分のフラッシュバックがなくなったことや、過敏性腸症候群が治ったことなどを話すと、彼は「おお」と言って、素直な喜びと驚きの表情を浮かべた。

 Kは以外にも、ほとんど口を挟まなかった。わたしがマシンガンのように喋っていたのと、基本的にはわたしが何か誤解を与えるようなことを言わない限り見守るというスタンスだったのだろう。

 最後にわたしは聞いた。「んでさ、とりあえず一回ためしてみない?」

 ここにきてはじめてNは渋い顔をする。自分の顎を右手で触った。「うーん、俺キリスト教だから、ちょっとそれは厳しいなぁ。話ならこうやって聞くけど」

「そしたらさ」とKが口を開いた。「こんど総幹部会のビデオ放映があるんだけど、うちらと一緒に一回見に行ってみない?」

「そうなんだ。ちょっと考えさせてもらえる?」Nは言った。

「もちろん」。わたしは言った。

 その後は仏法と関係のない世間話をしばらくし、ガストを出てNはわたしたちを家まで送ってくれた。

 後日、Nから連絡があり、「ビデオ放映にはやっぱり参加できない」と言ってきた。彼がキリスト教徒であることを思えば、致し方ないと思う。残念ではあったが、そのまま受け入れることにした。

 これがわたしにとって人生初の「折伏」であった。

 最初の一歩を踏み出せば、二歩目、三歩目は簡単だった。この日を境にわたしは毎週「折伏」を実践するようになり、わたしの人生が顕正会の活動を中心にまわり始めるまでそんなに時間は要しなかった。

第11話へと続く)

--------------------------------------------------

当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。

Comments


© 2017 by Shannon N. Smith.

bottom of page