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カルト幹部体験記 第9話 一筋の涙

  • 執筆者の写真: Shannon N. Smith
    Shannon N. Smith
  • 2017年9月1日
  • 読了時間: 4分

(第1話はこちら

「でしょ!」Kはものすごい笑顔で言う。

「ああ、マジで半端じゃねえ」。わたしは“発足30周年記念幹部会”のビデオで受けた衝撃の余韻に浸りながら、そう言った。「今まで、ここまで本気で命がけの凄い人がいるなんて思わなかった。いや、まあ、それは確かに歴史上の人物とか宗教上の人物で凄い人っていると思うけど、こうやって今、目の前に、現在進行系でいるなんて。先生はマジで日本を救う戦いをやっているんだね」

「そうそう、そうなんだよ! いやぁ、本当にそうなんだよ!」わたしの反応はKの予想を上回っていたようだ。Kは本当に嬉しそうだ。目には涙を滲ませている。「んで、このビデオでも触れていた100万達成の件。これを達成したら顕正会員10万人で国会議事堂を取り囲んで、国会請願を行うんだ。先生を国会の中に見送って、先生が直接、国を諌めるんだ。これで間違いなく、一国は動くよ」

「マジで言ってんの? それマジですごくね!?」

「おお、だから顕正会はマジなんだ。本気で国を救おうとしているんだよ。今の日本で誰もやらないなら自分たちがやるしかないんだよ。先生は世間の毀誉褒貶なんて眼中にない。先生はただ広宣流布・国立戒壇建立の御遺命に命を捨てて、最後、大聖人様にお褒めいただければそれでいいんだ。」

「うん、うん」わたしはもう何回頷いたかわからないぐらいずっと頷いている。

「世間の人は自分の欲を満たすことばっかり考えてるでしょ? 自分が成功するんだ、とか。金持ちになるんだ、とか。有名になりたいとか、認められたいとか、勲章貰いたいとか」

 なんだか自分のことを言われているみたいで、少し居心地が悪くなってきた。

 Kは続ける。「んで、世界を変えるんだ、みたいなことを言い出して何かやりだす人もいるけど、本音は、結局、名聞冥利。歴史に名を残したいとか、そんな欲が原動力だったりするわけでしょ。あと偽善者。口では愛だとかなんだとか言っておきながら、否定されるとすぐに怒り出す。それだったらまだ、正直に『俺は俺さえ良ければいい』って言う人のほうがまだ嘘がなくて格好いいよね」

 わたしはもう何も言えなくなってきた。

「んでね、日蓮大聖人はこう仰せなんだ。『愚人に褒められたるは、第一の恥なり』。つまり、愚かな人間に褒められるっていうことは、自分も愚かっていうこと。逆に言うと、本物に褒められるっていうことは、本物だって認められたってこと。だから先生は『ただ一人(いちにん)の大聖人のお褒めをいただければそれでよろしい』と仰せられるんだ。俺も先生にお褒めいただければそれでいい。そして顕正会は御遺命を達成して、日本と世界が救われたら解散する」

「なるほど。ようやく少し理解できてきたかも。すげーな。マジで」

わたしは目頭が熱くなるのを感じた。周りの”友人”から狂信者呼ばわりされながらも、K自身もただ愚直に信仰を貫いているだけだったのだ。一筋の涙が頬をつたいおりた。「俺に何かできることはあるかな?」

「折伏だよ」

「ああ、ビデオでもその言葉出てたね。折伏って具体的に何やるの?」

「折伏っていうのは、破折・屈服の義で、相手の間違った教えを破折して、日蓮大聖人の教えに屈服させること。とは言っても、強引に屈服させるってわけじゃなくて、基本的には仏法の感動を人に伝えて、相手が御本尊様と縁できるよう頑張るんだ。シャノンもやってみようよ。折伏こそが広宣流布のお手伝いだよ」

「もちろん」と言うと同時に、急に強烈な違和感がこみあげてきた。「あっ、でもその前にさ。俺、顕正会員じゃなくね、まだ。そもそも。どうやったら会員になれるの?」

「いや、シャノンはもう顕正会員だよ。初めて勤行ためした日のこと覚えてる?」

「うん」

「あの日に実はシャノン入信していて、顕正会員になっているんだよ」

「えっ、おれ聞いてないんだけど」。わたしは少し眉間に皺を寄せた。

「ああ、あの段階ではあえて『入信』っていう言葉は使わなかったんだ。だって自分たちがやりたいのは、御本尊と縁をさせることだけなんだけど、『入信』っていう言葉を聞いた途端こわくなる人が多いから、あえて言っていないんだ。まあ、嘘はつきたくないから聞かれたら正直に答えるけど。聞かれない限りは、そんな一言で引っかかって御本尊と縁できないなんてもったいないから、必要な時以外はあえて口にしていないよ」

「なるほどね。まあ、たしかにそうかもね。まあ、いっか。とりあえず今度おれの親友のNに話してみるわ」

「オーケー。んで、たぶん最初どう話していいかわからないだろうから、俺も一緒に行くよ」

「おお、ありがとう」

第10話へと続く)

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当ストーリーはファウンダーであるShannonが実際に体験したノンフィクションです。そのため人名等は伏せています。記憶を頼りに書いていますので、万が一記憶違いなどがあった場合、すみやかに訂正します。Shannonは特定の宗教やカルトに現在属していませんし、信仰を勧めているわけでもありません。彼の体験をそのまま語ることが誰かの役に立てば、との思いで書いています。

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© 2017 by Shannon N. Smith.

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